出世頭はトドのつまり 











 成長とともに名前が変わっていく魚を出世魚と呼ぶことはご存知と思いますが、ボラは特に名前が多い魚です。地方名も多いので代表的なものを書き出します。
 キララコ、オボコ、ハク、イナ、イナッコ、ゲンプク、スバシリ、スバコ、ボラ、トド(・・)‥‥
 藻類や、小動物を泥と一緒に吸い込んで鰓(えら)で漉(こ)し分けて食べています。一日中もぐもぐ口を動かしているので意地汚い魚というイメージがつきまといます。甲殻類や貝類も砕いて食べるため幽門部が肥大して鶏の砂肝のようになって、臍、そろばん玉などと珍重されています。
 汚れた水域で生きているボラは泥くさくて食べられませんが、きれいな環境にいるボラはさっぱりとした上品な味です。

 葉山のボラはクロダイやメジナの外道(狙い以外の獲物)として釣れるので、ベテランは持ち帰らないことが多いようですが、寒い時期のボラが美味なことは良く知られていて初冬から早春までこの魚の生理的な特徴を利用した豪快な釣りが各地で見られます。
 一般に魚たちは厳しい冬を乗り切るために皮下や内臓に脂肪を溜め込みますが、ボラは特に脂が多く、瞼も脂の膜が覆ってしまい、視力が極端に落ちます。

 


 桟橋から頑丈な延べ竿を出して太い糸先には赤、青、黄色など派手なビニール片を大きな掛け針につけて水底を叩いたり躍らせたりしながら好奇心に駆られて寄ってきたボラを引っ掛けて一気に抜き上げるのです。  

 平底の舟の両舷に同数の客を座らせ、息を合わせて舟を左右とゆすりながら大ボラを次々と上げていく名人がいるというので利根川の下流まで行ってみました。
 「うちは魚探積んでっから」老船長は自信満々でした。乗り合わせた6人は大ボラとの格闘を夢見て黙々と船をゆすり続けました。3時間ばかり粘った時「上がりましょう」突然名人の決定で、みな狐につままれたような顔のまま竿を置きました。血まみれ覚悟で着ていった合羽はきれいなまま‥…陸に上がって振舞われた山盛りのシジミ汁は腹の立つのを忘れさせてくれる結構な味で、いまだにボラというとシジミを連想するのも困ったものです。

 ボラをさばくときは内臓を傷つけないように注意してください。腹骨と一緒に黒い膜もすき取ります。酢味噌や梅肉酢を使えば一風変わった刺身を楽しめます。
[くれ竹通信 Vol.36 2007年3月 から]

 
     

 

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