県指定
民俗
4 翁面
おきなめん
この翁面は『新編相模国風土記稿』に、「漁夫が小坪の海中から拾い揚げたもの」 とある面であろう。煙などのために全体が黒くなっていて彩色は不明であり、三番叟[さんばそう]面か翁面かはっきりしないが、おそらく翁面であろう。
年代を決定する極め手はない。しかし彫技が比較的よいし全体に作品の調子が高く、近世作の翁面にはこれほどの作品が少ないこと、普通の翁面よりやや小型で、古い型式を残していることなど、室町時代作を思わせる。
仮面が小型でよくまとまっている点、漁夫が海中から拾い揚げたという伝承をもつ点などは、仮面史料、民俗資料として比較研究上注意すべきことであり、極めて興味あるものである。また、この翁面を所蔵している森戸神社の仮面は持ち運びの容易なものであるから、所蔵場所が不変であったとはいえないが、森戸神社は鎌倉に近いということ、その鎌倉は中世における政治の中心地で、中世この地方には、鎌倉猿楽[さるがく]と も名づけられる猿楽芸団が存在していた。この中世猿楽芸団が最も神聖視し、大事にしていたものが翁面であるから、従って南関東には中世作の翁面がいくつかあってもよいはずである。ところが、その当然あるべき翁面が関東には非常に少ない。
そのような意味でも、森戸神社に室町期を思わせる翁面が存在していることは貴重であり、芸能資料としても存在価値は高いといえる。
分類/区分 | 県指定文化財 有形民俗 民俗 |
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所在地 | 堀内 1025 |
所有者等 | 森戸大明神 |
指定年月日 | 平成 7年 2月 14日 |
員数 | 1面 素材 朴(ほうの木) 面長 16.5cm |